ミゲル先生のメキシコ食巡り ユカタン風パエリャ Paella a la Yucateca

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 スペインにおけるパエリャの歴史については諸説がありますが、一説には、パレッタ・パエリャ(バレンシア・パエリャ)が生まれたバレンシア地方がその起源だといわれています。
 パレッタ・パエリャは、15世紀から16世紀にかけて、バレンシアの田舎で生まれました。魚や貝をつかった「海のパエリャ」と異なり、野鳥やウサギ、生野菜、米、サフラン、水、オリーブオイルを使います。スペインないしヨーロッパ全土でトマトが広まる以前のことです。
 農牧民の食事であるこのパエリャは、調理につかうオレンジの木の薪による独特の香りが特徴でした。
 その後、年月を経るとともにさまざまなバリエーションが生まれ、bacoja(大きめのサヤインゲン=日本にはない)やタマネギ、garrofo(白豆)、tavella(インゲン)、赤パプリカ、アーティーチョークを加えるようになります。さらにヌエバ・エスパーニャ(メキシコの当時の呼称)に住んでいたスペイン人が、新しい味と香りをもとめて、トマトを加えるようになりました。ひよこ豆(エジプト豆)を使う地域もあります。
 一方、スペインの地中海岸東部のレバンテ地方でパエリャが誕生したという説もあります。この地域のパエリャは豆と海産物と肉と魚でつくられ、これが世界中で「パエリャの味」と認知されるようになりました。
 パエリャという名称は、バレンシア風コメ料理という意味で1900年に使われはじめたとされています。カタラン語でフライパンのことをパエリャと呼ぶように、この料理につかう鉄鍋のことをバレンシア人はパエリャと呼んでいます。また、パエリャという名前は、調理用具を示すPEROL(大鍋)という単語を語源とするという説もあります。

 ユカタン風パエリャは、トマトの缶詰と、サラミのように薄切りにしたレモンが特徴です。また本来は、完成直前にオーブンで、表面をきつね色にパリパリに焼いて米の風味を引き立たせるのですが、それには巨大なオーブンレンジが必要なため、今回のレシピには載せませんでした。私が子供のころは、月に2度か3度はパエリャを食べ、母が調理するのを兄弟で手伝ったものです。
 パエリャは、ビールよりもワインの方があいます。メキシコでは昔からワインと一緒に食べてきました。
 1531年のカルロス5世の布告で、ヌエバエスパーニャ(メキシコ)やアメリカ大陸を目指すすべての船舶が移植用のブドウとオリーブの苗を運ぶことを義務づけられて以来、メキシコではワインがつくられるようになり、その後、アメリカ大陸のほかの地域に広まっていきました。
 最初はコアウイラ州やカリフォルニア州などの現在のメキシコ北部で栽培され、最初の醸造所は、マリアデラスパラス(現在のカサマデーロ)という場所に設けられました。
 メキシコ産のワインは、スペインでも大当たりしたため、1595年、スペイン・イベリア半島の生産者が、メキシコをはじめとするアメリカ大陸全域でブドウの植樹を禁じるよう当時のスペイン王フェリペ2世に要求し、ついには、既存のすべてのブドウ農園の破壊を王が命じるにいたりました。
 この時代から、極端な不買運動は存在していたのです。【そんりさvol.113(2008.6)】

材料(4人前)
・コメ(3カップ)
・中型のエビ 8尾(殻つきでも殻なしでも)
・中型のイカ 1匹
・ムール貝 4(ハマグリかアサリでも)
・ピーマン中かパプリカ 1個
・サフラン
・鶏肉 250グラム
・レモン 1/2
・トマト 中1/2
・タマネギ 中1/4
・オリーブオイル
・塩 3〜4つまみ
・水 米の1.5倍程度

作り方
①サフランを1時間ほど水につけて溶かす(急ぐ際は湯につける)。
②ざるで米を洗って、乾かす。
③タマネギをみじん切り。ピーマンは薄切り。レモンは極薄の輪切り。トマトは細かく刻む。
④イカは薄い輪切りか細切り。鶏肉は1㎝角に。
⑤トマトとタマネギ、鶏肉、イカを油で炒めたあと、米と塩を加え、手早くさっと炒める。
⑥エビとピーマンとムール貝とレモンの薄切りをかざる。サフランをとかした水を最初はひたひたに。その後必要に応じて少しずつ加える。弱火にして蓋を閉じ、米がやわらかくなってきたら強火にして水を飛ばし、ちょっと焦げたにおいがしたら完成。

ミゲル・アクーニャ メキシコ・ユカタン州出身で中学・高校の英語教師をしたあと、1986 年に来日。「FMCOCOLO」で7年間DJをつとめた。現在、大阪・天満で「メリダスペイン語教室」(http://www.meridamex.com)を主宰。

つくってみたら

ムール貝のかわりにアサリのむき身をつかいました。

メキシコの料理と食文化を紹介する新シリーズです。
レシピを参考にぜひ実際につくってみてください。

「ミゲル先生のメキシコ食巡り」は「そんりさ vol.113」(2008.6)から連載しています。
過去のソンリサの一部はPDFで購読できます。
https://recom.r-lab.info/sonrisa/#1

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