「ラ・バンバ」という歌やハラペーニョは皆さんご存知ですよね? この二つは、メキシコ共和国のなかでとりわけ美しいベラクルス州について語るとっかかりにぴったりです。
ベラクルス州は、メキシコ湾と山岳地帯の間に細長く横たわっており、州都はハラパ・デ・エンリケス市、通称ハラパと呼ばれています。ハラパ市は、周辺地域を含め約80万9300人が住んでいます。もうひとつ重要な都市はベラクルス市で、幾度も外国に侵略されながら英雄的にたたかった都市として知られています。
スペインの侵略者エルナン・コルテスは、1519年4月22日にサンフアン・デ・ウルアに上陸し、1535年にサンフアン・デ・ウルア要塞が着工されます。後に北半球でもっとも優美な要塞と呼ばれるようになり、現在では著名な観光スポットになっています。
19世紀、メキシコがスペインから独立を宣言した際、サンフアン・デ・ウルア要塞は、スペイン側の最後の砦となりました。1838年には侵略してきたフランス軍に、1847年にはアメリカ合衆国軍に占拠されました。
ベヌスティアーノ・カランサが共和国大統領だった1915年には、連邦政府の基地として活用され、ベラクルス州の刑務所だったこともあります。
現在、サンフアン・デ・ウルアは、メキシコ軍が利用している一部の砦をのぞいて博物館になっています。
ベラクルス州は歴史の宝庫であり、古代文明揺籃の地でもあります。この地域には、アメリカ大陸の北半球で最古の文明であるオルメカのほか、ウアステコスとトトナカスという3つの古代文明が生まれました。
はるか昔からの、こうしたさまざまな文化の融合が、ベラクルスに豊かな食文化をはぐくみました。
ベラクルス州は、長大な海岸線を抱えているため、海産物の料理は、魚介のマリネや海老のパイ、魚のフライ、タコの墨煮……などバラエティに富んでいます。なかでも有名なのがベラクルス風ウアチナンゴ(鯛料理)です。
ベラクルス料理には、様々な種類の香辛料(チレ)をつかいます。そのなかのひとつにチレ・マンサノ(リンゴのような色のチレ)があります。ハラペーニョもベラクルスのチレです。全世界で知られており、日本でも簡単に入手できます。
スペイン料理からの影響もまた、ベラクルス料理を豊かなものにしています。
今回の料理は「鯛のベラクルス風」です。【そんりさvol.117(2009.1)】
材料(4人分)
・鯛 600g程度のもの1尾
・タマネギ小 2個
・トマト大 4個
・レモン 1個
・甘長トウガラシなど辛くないトウガラシ 6本
・種を除いたオリーブの実 12個
・ケッパー 12個
・ニンニク 6片
・オリーブオイル 大さじ4
・ホールマッシュルーム 12個
・ハラペーニョの薄切り 1片
・パセリ 1束
・水
・コショウ
・塩
作り方
①魚を洗って鱗と内臓を取り除き、皿に置く。ぶつ切りにしてもまるごとでもよい。レモンを鯛の上にしぼって、塩とコショウをふる。
②トマトを洗ってアルミ箔で包んでよく焼き、ミキサーにかけてソース状に。
③ニンニクを薄切りにして、オリーブオイルで炒めたあと、ニンニクは取り除く。
④甘長トウガラシを炒め、マッシュルーム、オリーブ、ケッパー、みじん切りパセリ、輪切りか薄切りのタマネギを入れてさらに炒め、ハラペーニョ、トマトソース、塩、コショウを加えたあと、レモン果汁をかけた鯛を入れる。水を適宜加えながら40〜50分煮込む。
⑤フランスパンを添えてどうぞ
つくってみたら
トマトを焼くのは時間がかかるから、生をミキサーにかけた。
鯛はたかいので、1尾398円だったレンコダイに。トマトソースでグツグツ煮こむから、アクアパッツァよりも濃厚でトマトの酸味でさわやか。
最後は蓋をとって、ソースを煮飛ばして減らし濃厚にしたほうがおいしい。
「ミゲル先生のメキシコ食巡り」は「そんりさ vol.113」(2008.6)から連載しています。
過去のソンリサの一部はPDFで購読できます。
https://recom.r-lab.info/sonrisa/#1
コメント