さて、ついついながながとワイノ音楽の発展について話してしまったが、今回はアンデス地方の楽器を大まかに眺めてアンデス地域のまとめとし、次回以降は、テーマごとにペルー音楽を見ていきたいと思うので乞ご期待。
アンデス地域は海岸地方以上に多様な楽器世界が広がっている。先住民起源、ヨーロッパ起源、そして両者の融合によるものなど様々だ。しかしあまりにその種類が豊富すぎるので、今回はアンデス大衆音楽の中で広く使われる代表的な楽器に焦点を絞って紹介していきたい。
まず、アンデス音楽といえば雄もが思い浮かぺるものとしてケーナがある。ケーナは筒の先に吹きロとなる切れ込みを入れ、指穴を開けたもので、日本の尺八の親戚だ。累材は、骨から竹、樹、陶器などさまざまで、ペルーアンデス全土で使われている。現在広く使われている西洋音階に調律されているケーナは歴史的には新しい。穴の数や吹きロなどにも様々なバリエーションがあり、民族音楽の世界では今も多様なケーナが使われている。わりとヒョロヒョロと細く萎びた音で吹かれることが多く、いわゆるフオルクローレのように、楽団の中でソロで演奏されることは意外に少ない楽器だ。
続いてパンバイプを紹介したい。バンパイプとは、いわゆるサンポーニャに代表されるタイプの楽器で、底のある筒を並べたもので、上から息を吹き込んで鳴らす。ペルーでもともと使われていたパンパイプは、大きく分けてアンタラとシクに分けられる。この二つと、近年新しく生み出されたサンポーニャがパンパイプ属の代表的な楽器だ。アンタラは古くはペルー各地で広く使われていたが、現在は北部のカハマルカでのみポピュラーな楽器となっている。サンポーニャのように2列になっておらず、1列のパンバイプをひとりで演奏する。シクは、サンポーニャのもととなった楽器で、サンポーニャの2列を分解して1列ずつ2人で持ち、交互に2人1組でひとつの曲を吹くというちょっと変わった楽器だ。ペルー南部のプーノからボリビアにかけてのアルティプラーノ大平原で広く使われる。大人数での合輿が好まれる楽器で、時に何十人もの大縄成で演奏される。プーノ県では地域ごとに合奏団があり、祭りやコンクールなど、様々な機会に演奏されている。
つづいて弦楽器を見てみよう。ペルーのアンデス地方でも、もっとも代表的な弦楽器といえばガット・ギターだ。アンデス地域では、実は都市部でより好まれる楽器で、田舎の方ではむしろアルバ(ハープ)やバイオリンが好まれる。キリスト教の布教の過程で教会音楽を演奏するために山奥の村々まで持ち込まれたためだ。またペルーは、南米でも有数のアルパ大国だ。パラグアイ、メキシコ、ペネズエラなどと並び、高度なアルパの奏法が確立されている。特に逆さに持ち上げて歩きながら演奏するのはペルーのアルバの特徴の一つだ。バイオリンは、調律自体が先住民のものに変えられて演奏されており、独特な響きで奏でられる。これらの楽器もペルーアンデスのほぼ全域で使われる。
逆に、アンデスの弦楽器として有名なチャランゴは、実はペルーでは南部地域でしか使われない。ペルーのチャランゴは、ボリビアやチリの一般的な背面が丸いタイプのものとは異なり、ギターをまさに小型化した背面がフラットなものだ。弦数は5弦から15弦ぐらいまでさまざまあり、弦の素材もナイロンだけでなく、鉄弦も好まれる。地域によって弦や演奏方法だけでなく、調律まで異なっている地域色豊かな楽器である。
このほかに広く使われる楽器としては、背面がフラットなマンドリンやアコーディオンがあげられる。貧しい村落部では、高価なアコーディオンではなくピアニカやハーモニカなどが使われる。
そして、ワンカーョ地域では、クラリネットやサックスが使われる。これはこの地域独特の好みだ。また、主に金管を主体としたパンダ(ブラスバンド)は、祭りを盛り上げる楽隊として今やなくてはならない非常に重要な存在として人々に愛されている。調子っぱずれな高音でひと晩中でも奏でられるハンダの人々のパワーには圧倒される。
このほかにも非常に魅力的な楽器が数多くあるが、折りを見て少しずつまた紹介していきたい。【そんりさvol.102(2006.7)】
「音楽三昧♪ ペルーな日々」は「ソンリサ92号」(2004.11.6)から連載しています。
過去のソンリサの一部はPDFで購読できます。
https://recom.r-lab.info/sonrisa/#164
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