ミゲル先生のメキシコ食巡り サメのパンPan de Cazón

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 パン・デ・カソンは、スペイン人上陸前からマヤに伝わる料理です。季節を問わず食べるけれど、ユカタンではとりわけ復活祭前の四旬節に食卓にのぼります。
 ユカタン半島の多くの地域で、トルティーヤを「パン」と呼ぶ習慣があるのにくわえ、料理の形が、丸いパンに似ているため「パン」と名づけられました。
 カソンは、日本にはいない小型のサメです。独特の臭みを消すためepazote(アリタソウ=メキシコ原産の雑草)というハーブやレモンを利用します。
 三層のトルティーヤに、下からフリホール、魚、トマトソースをのせて重ねます(アボガドを添えるのは私の工夫)。私の母は、子供には1人3セット(トルティーヤ9枚分)、大人には4セットの上にトルティーヤ1枚をのせて(13枚分)いつも皿にもりつけてくれました。
 マヤの宇宙観では、地下世界は9層、天上界は13層で構成され、マヤのピラミッドの基壇や階段の数も多くは9段や13段です。料理の盛りつけにも、そんなマヤの宇宙観が反映しています。
 カンペチェ州やキンタナロー州では、パン・デ・カソンは自分たちの州の独自の料理だと語る人が少なくありません。メキシコという国や自分の州の歴史を知らないための誤解です。
 まず、「パン・デ・カソンがユカタン料理だ」と言うとき、かつての「ユカタン」は、現在のユカタン、カンペチェ、キンタナロー、チアパスの各州とタバスコ州の一部をふくむ広大な地域を示していたことに留意する必要があります。現在のベリーゼ共和国とグアテマラもユカタンの一部でした。
 しかし1857年8月、パブロ・ガルシア弁護士が、ユカタン州知事に対する反乱をカンペチェ県で起こし、翌年5月、メリダ市(ユカタンの州都)とカンペチェ市の軍指導者は、カンペチェ地域を分離させ新しい州とすることに同意しました。(実際の州設立は、共和国大統領ベニト・フアレス弁護士が1863年に承認して実現する)
 さらに1897年には、ユカタン州知事にカルロス・ペオン・マチャドを再選しようとする人々によって多くの政治問題が生じました。マチャド再選に反対するグループは、フランシスコ・カントン将軍を支持し、彼が当選しました。カントンの後に知事に就任したオレガリオ・モリナ弁護士は、州の全財産をわずか数家族の手にゆだねました。
 そのころ、メキシコの独裁者ポルフィリオ・ディアス将軍は、ユカタン州の一部を奪おうと画策していました。多くの論争を経て1902年にキンタナローという州が設立されました。
 パン・デ・カソンがなぜ「ユカタン料理」であるのかを多くの人々が知らない背景には、こうした歴史的経緯があるのです。【そんりさvol.114(2008.7)】

材料(4人分)
・トルティーヤ 12枚
・新鮮なコザメ 300g(タラなどの魚や肉でも可)
・トマト 中4個
・タマネギ 中1個
・オリーブオイル
・熟したアボカド 1個
・塩 胡椒
・黒いんげん豆缶詰(金時豆でも)200g
・レモン 1個
・コリアンダー 大さじ2

作り方
トマトソース トマト2個とタマネギ1/2、水1/2カップ、塩、胡椒を加えて、ミキサーにかける。こげつかないように混ぜながら弱火で煮つめる。
魚炒め 魚を少々の塩と epazote(なくてもよい) を加えた鍋でやわらかくなるまで煮る。冷水をかけ、皮や骨をとりのぞき、身をほぐす。
タマネギ1/4とトマト1個を細かく刻み、魚といっしょにオリーブオイルで炒め、塩と胡椒をくわえ、レモン1/2をしぼる。
フリホーレス(Frijoles refritos) 黒インゲン豆の缶詰(生豆ならひと晩浸水させて塩ゆで)は少量のコンソメスープとともにミキサーにかけ、タマネギ1/2のみじん切りと、トウモロコシ油(なければサラダ油)で炒め、塩少々をくわえる。
ワカモレ アボカドをつぶし、みじん切りのトマトとレモン果汁(1/2個分)、コリアンダー、塩と胡椒をくわえる。
⑤ 盛りつけは、まずトルティーヤをしき、その上にフリホール、トルティーヤをのせ、その上に魚、さらにトルティーヤをのせ、その上にトマトソースとワカモレをかける。ハバネロをそえてもよい。

つくってみたら

 3種類のおかずをつくり、それを重ねるから手間がかかるが、フリホーレスやワカモレをつくりおきしておけば楽。
 黒インゲン豆は成城石井などにあるが、今回はスーパーの金時豆(赤インゲン)をつかった。
 ボリュームたっぷり。豆ペーストの甘みとトマトやレモンの酸味、アボカドとパクチーの風味、淡白な魚の調和がすばらしい。

 フリホーレスについては以下のようなレシピも。

フリホーレス・レフリトス(Frijoles refritos)

材料(4食分)
・金時豆 250g(缶詰でも)
・ローレル 1枚
・生タイム 1本(あれば)
・玉ねぎ(みじん切り)1/2個
・オリーブオイル 大さじ1
・クミンパウダー 小さじ1
・湯 適量
・塩 小さじ1

作り方
①金時豆はひと晩水につける。
②2,3回ゆでこぼしたあと、ローレル(あれば生タイム)とともに豆が指でつぶせるくらいまで煮って水を切る。
③玉ねぎ、クミンパウダーをオリーブオイルできつね色になるまで炒める。
④茹でた豆を③にくわえ、軽く炒めてから豆全体ぎりぎりかぶる湯を足す。
⑤塩で味を調整しながら、豆をつぶし混ぜる。(冷凍保存可)

「ミゲル先生のメキシコ食巡り」は「そんりさ vol.113」(2008.6)から連載しています。
 過去のソンリサの一部はPDFで購読できます。
 https://recom.r-lab.info/sonrisa/#1

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